家族の話 【号泣・短編小説】認知症の祖母が「ボロボロのマグカップ」を守り続けた理由
私は、自分の底の浅さを知っている。白衣をまとい、仏のような微笑みを浮かべて老人の背中をさすっていても、腹の底では常に時計の針ばかりを気にしている。他人の下の世話を献身的にこなす心優しい青年。そんな自己陶酔のメッキは、過酷な労働環境の中であっけなく剥がれ落ちていた。私はただ、生活のため、そして社会的な体裁のために、心を持たない自動人形のように立ち回っているに過ぎない。介護士という職業は、私のような底意地の悪い偽善者が、最も就いてはならない仕事だったのかもしれない。勤務先の特別養護老人ホームには、私の実の祖母が入所している。