2026-07

泣ける話

【泣ける短編】塾講師の僕が、父の手帳で知った最後の約束

郊外の駅前は、夜になると少しだけ寂しい顔をする。 昼間は自転車のベルやバスの音でにぎやかなふりをしているくせに、終電が近づく頃には、シャッターの下りたパン屋も、古い時計台も、みんな黙り込む。 私はその駅前の雑居ビルで、塾 […]

泣ける話

【感動短編】雨の路地で渡せなかった傘と、母の未送信メール

雨の日の路地には、昔のことがよく落ちている。 水たまりに映る電線。 軒下でしぼんだ紫陽花。 商店街の裏口から流れてくる油の匂い。 私は中学校の教師になって十年になるが、雨の帰り道だけは、どうしても十八歳の自分に戻ってしま […]

泣ける話

祖母の連絡帳を読んだ夜、私は“見守る愛情”を知った

保育園の朝は、泣き声から始まる。泣き声、といっても悲しみばかりではない。母親の脚にしがみついて泣く子。眠くて泣く子。なんとなく空気に呑まれて泣く子。それから、泣かないでいるために、唇だけを一生懸命むすんでいる子。私はその顔を見るたび、ああ、人間はこんなに小さいころから、平気なふりを覚えるのだなと思う。
家族の話

お守りの裏

祖母が入院したのは、梅雨の匂いが病院の白い壁にまで、じっとりと沁み込んでくるような六月の終わりだった。 私はその病院で働く作業療法士だった。 祖母が患者として運ばれてきたと聞いたとき、私は驚いた、というより、胸の奥に長いこと置きっぱなしにしていた鈍い石を、誰かにそっと指で押されたような気がした。 ついに来たのだ、と思った。