2026-06

泣ける話

【泣ける話】バス運転士が聞いた恩師の録音|定期券に残された最後の約束

私は、山のふもとの町でバス運転士をしている。朝は学生を駅まで送り、昼は病院へ行く年寄りを乗せ、夕方には買い物袋を抱えた人たちを住宅地へ帰す。同じ道を、何度も走る。右に曲がる場所も、坂の手前で揺れる段差も、雨の日に滑りやすい白線も、体が覚えている。人を運ぶ仕事だ。けれど私は、自分がどこへ向かっているのか、長いあいだ分からなかった。高校時代、私はよく遅刻した。
家族の話

【泣ける話】タクシー運転手の息子が聞いた父の留守電|古い携帯に残された最後の言葉

私は、港町でタクシーを走らせている。朝は市場へ向かう魚屋を乗せ、昼は病院帰りの年寄りを乗せ、夜は飲み屋街から家へ帰る人を乗せる。人を運ぶ仕事だ。けれど私は、人の気持ちを運ぶのは下手だった。後部座席で泣いている人がいても、ミラー越しに見るだけで、何も言えない。「大丈夫ですか」
家族の話

【泣ける話】郵便配達員の娘に母が残した手紙|山あいの町に咲いた菜の花の約束

私は、郵便配達員をしている。赤いバイクに乗って、山あいの町を回る。春は杉の花粉にまみれ、夏は汗で背中が濡れ、秋は落ち葉で道が滑り、冬は雪にタイヤを取られる。それでも私は、毎日同じ道を走る。郵便というものは不思議だ。たった一枚の紙が、誰かの一日を明るくもするし、暗くもする。合格通知。請求書。
泣ける話

【泣ける話】図書館司書が見つけた恩師の手帳|余白に残されたペンと言葉

私は、図書館司書をしている。本に囲まれて働く、と言えば聞こえはいい。けれど実際は、返却された本を棚へ戻し、予約票を確認し、延滞の電話をかけ、静かにしてくださいと何度も言う仕事である。物語の中にいるような毎日ではない。むしろ、物語から少し外れた場所で、人が本を探すのを手伝っている。それくらいが、私にはちょうどよかった。私は昔から、声が小さかった
家族の話

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私は、駅前の小さな書店で働いている。本が好きだから、というほど立派な理由ではない。人と長く話すのが苦手で、本なら黙って棚に並んでくれるから、少し安心だった。それだけのことだ。本はいい。読まれる日まで、じっと待っている。急かさない。