家族の話 タクシー運転手と弟の和解|雨の地図【家族の感動短編】
最後の夜、一本だけ乗らないか〉弟へ送るその一行を、私は三十七分も見つめていた。送信ボタンというものは、押すだけなら子どもにもできる。四十八歳の兄には、なかなか難しかった。営業所は改装のため、翌朝から三か月閉鎖される。車は郊外の仮営業所へ移り、古い休憩室も、煙草の匂いが染みた配車台も、今夜でいったん空になる。東京のホテル本部で旅行手配をしている弟が、研修で帰郷していることは知っていた。最後の日くらい、私が何をしてきたのか見てほしかった。