2026-03

泣ける話

姉がいない朝に、あのマグカップだけが残った

姉がいなくなってから、商店街の朝は妙に広くなった。 いなくなった、という言い方は少し大げさかもしれない。 死んだわけでもなければ、夜逃げしたわけでもない。 ただ、毎朝そこにいた人が、ある日から店に立たなくなった。
泣ける話

祖母が見ていたのは、私の仕事だった

祖母が入院したとき、私はその病院で清掃員として働きはじめて、まだ三か月しか経っていなかった。 三か月というのは、仕事に慣れたふりだけがうまくなって、中身はまだ空っぽ、という、いちばんみじめな時期である。 モップの持ち方も、汚れの見つけ方も、先輩の真似をしてそれらしくやっていた。 けれど、床の曇りは拭き取れても、自分の胸の中にある濁りまでは、どうにもならなかった。