祖父の家を片付けていたとき、古い引き出しの奥から一通の手紙が出てきた。
宛名は、私だった。
書かれた日付は、十年以上も前。
「大人になった君へ」
そう書かれていた。
祖父は、私が小さい頃によく遊んでくれた人だった。
無口で、不器用で、でもやさしい人だった。
私は、その手紙をしばらく開けられなかった。
なぜだろう。
もう会えない人の言葉を読むのが、少し怖かったのかもしれない。
それでも、深呼吸をして封を開けた。
中には、短い文章が書かれていた。
「つらいときは、無理に頑張らなくていい」
「でも、ひとりだと思うな」
たったそれだけだった。
でも、その一言で、涙が止まらなくなった。
私はずっと、「強くならなきゃ」と思っていた。
誰にも迷惑をかけないように、
弱音を吐かないように、
ちゃんと生きなきゃと思っていた。
でも、祖父は知っていたのかもしれない。
私がそうやって、ひとりで抱え込むことを。
「ひとりだと思うな」
その言葉が、胸に残った。
帰り道、空はやけに静かだった。
でも、不思議と少しだけ軽かった。
祖父はもういないけれど、
その言葉は、ちゃんとここに残っている。
※本作品はフィクションです
心が疲れているあなたへ
ひとりで抱え込んでしまうとき、
その重さは想像以上に大きくなります。
でも、誰かの言葉や記憶が、
そっと支えてくれることもあります。
あなたが、ひとりではありませんように。


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