泣ける話 「父の声が消えない」
ごす、ごす」と雪を踏む足音だけが聞こえる。 今朝、配達車の荷台から「きゅ」と短い鳴き声みたいな音がして、背中が冷えた。 誰も触っていないはずの荷物が、わずかにずれている。 伝票の宛名は、昨日まで空欄だった“父の部屋”。 そして差出人欄には、見慣れた父の字——いや、父の字に似せた、ゆっくりとした筆圧の文字があった。「……俺が届けるんだぞ、これ」 吐いた息が白くほどけ、荷台の冷気が肺の奥まで刺さる。段ボールは乾いて硬い。角に触れた手袋が、ざらりと鳴った。