2026-02

泣ける話

捨てるはずだった教科書

夜勤明けの更衣室で、僕は“自分の名前が書かれた教科書”を拾った。 退所者の忘れ物の箱から出てきたそれは、雪で湿って、紙がふやけている。 ありえない。あれは卒業の日、恩師に突き返したはずだ。 ページをめくると、赤ペンの跡と一緒に、薄い便箋が挟...
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「帰ってきたよ」の約束

※本作は創作(フィクション)です。実在の人物・団体とは関係ありません。「待つこと」は、時々いちばん重い。それでも人は、誰かの言葉を信じて生きてしまう。商店街の裏路地で、僕は“自分のサイン”を見つけた。配達伝票の受領欄に、確かに僕の名前がある...
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『母の「ごめんね」が刺さった夜――器の底で気づいたこと』

今日は珍しく、俺は母ちゃんを外に連れ出した。「たまには飯でも、奢らせてよ」そう言うと母ちゃんは、驚いたように目を丸くした。それから、ちょっとだけ照れた。行き先は、駅前の小さな食堂。昔、まだ俺が子どもだった頃から通ってる店だ。引き戸を開けると...
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「“ごめんね”が胸に刺さった夜、僕は初めて親になりかけた」

“ごめんね”が胸に刺さった夜第1回:誘う理由は言えないまま、暖簾の代わりに扉を押したその日は、仕事帰りの足取りがいつもと違った。何がどう、というほどのことじゃない。ただ、母に電話をかけたくなった。「飯でも行く?」自分でも驚くほど、あっさり言...
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「先を越された日、祖母がくれた“もうひとつの約束”」

私が小学校二年生くらいの頃のことです。近所の商店街の角に、小さなお肉屋さんがありました。揚げ物の匂いがいつも店先に漂っていて、学校帰りに通るだけでお腹が鳴るような場所でした。そこのコロッケが、とびきりおいしかったのです。外はサクッとして、中...