家族の話

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家族をテーマにした泣ける短編まとめ|母・父・祖母との絆に涙する物語集

家族との時間は、いつも当たり前のようにそばにあります。朝の声。台所の音。玄関に並んだ靴。何気ない電話。そのひとつひとつが、あとになってから胸に戻ってくることがあります。このページでは、家族をテーマにした泣ける短編をまとめました。
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【泣ける話】パン屋の孫が見つけた祖母の手紙|エプロンに残された小さな希望

私は、住宅街の小さなパン屋で働いている。働いている、と言えば少し聞こえはいいが、実際は朝の四時に起き、粉にまみれ、レジで笑い、売れ残ったパンを袋に詰める毎日である。夢だったわけではない。パンが好きだったわけでもない。ただ、会社員を辞めた私を、祖母の店だけが拾ってくれた。それだけのことだった。店は、古い住宅街の角にあった。「こむぎ日和」祖母がつけた名前だ。
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【泣ける話】弁当屋の孫が見つけた祖父のレシート|弁当箱に残された最後の約束

私は、商店街の弁当屋で働いている。働いている、と言えば聞こえはいいが、胸を張れるほどのものではない。朝は唐揚げを揚げ、昼はレジを打ち、夕方には売れ残りに半額のシールを貼る。立派な夢があったわけではない。ただ、どこにも行けなかった私が、たまたま残った場所が、祖父の弁当屋だった。商店街は、昔ほど賑やかではない。シャッターの閉まった店が増え、魚屋の看板は色あせ、八百屋のおばさんの声だけが、どうにか昔のまま残っている。うちの店は、その商店街の真ん中にあった。
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【泣ける話】ケアマネの娘が見つけた父の手帳|老人ホームに残された最後の伝言メモ

私は、人と人のあいだを取り持つ仕事をしている。ケアマネジャーという仕事は、立派そうに聞こえるが、実際は伝言係に近い。医師の言葉を家族へ伝え、家族の不安を施設へ伝え、本人の希望を役所の書類に変える。電話をかけ、日程を合わせ、頭を下げ、また電話をかける。誰かの暮らしを支えているような顔をして、私は毎日、誰かの言葉を運んでいる。それなのに、父の言葉だけは、最後までうまく運べなかった。父は老人ホームに入っていた。
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【泣ける話】作業療法士の娘に母が残した録画メッセージ|マグカップに込めた最後の約束

私は、人に暮らし方を思い出してもらう仕事をしている。作業療法士という仕事は、歩けるかどうかだけを見るのではない。箸を持てるか。服のボタンを留められるか。洗濯物をたためるか。湯のみを持って、自分でお茶を飲めるか。そういう小さな動作を、私は毎日、真面目な顔で数えている。人は、大きな夢を失う前に、まず小さな朝を失う。歯を磨くこと。カーテンを開けること。いつものカップで、いつもの飲み物を飲むこと。私はそれを知っていた。
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【泣ける話】理学療法士の孫が見つけた祖父の日記|靴に残された“立ち方”の教え

私は、人に歩き方を教える仕事をしている。理学療法士という肩書きは、いかにも人を支える者のようで、名刺に刷ると少し立派に見える。けれど実際の私は、人の人生を支えるほど強い人間ではない。ただ、膝の曲げ方を見て、重心の移し方を直し、転ばないように横に立つ。それだけのことを、毎日、神妙な顔をしてやっている。病院のリハビリ室には、いろいろな靴が並ぶ。
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【泣ける話】返信できなかった母からの留守電|雨の路地で気づいた最後の愛

雨の日の配達は、人を少しだけ意地悪にする。濡れた伝票。曇る眼鏡。階段の踊り場に置かれた傘のしずく。何度チャイムを鳴らしても出てこない部屋。そういうものが一つずつ積み重なって、胸の中に、小さな泥のようなものが溜まっていく。私は配達員になって七年になる。最初のころは、誰かの暮らしを運んでいるのだと、少し誇らしく思っていた。誕生日の贈り物。孫へ送る野菜。遠くで暮らす誰かへの服。
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【感動する泣ける短編】保育園の連絡帳に残された祖父の言葉と、見守るやさしさの物語

保育園の朝は、たいてい連絡帳から始まる。登園してきた子どもの靴をそろえ、泣いている子を抱き上げ、まだ眠そうな顔をしている子の手を引きながら、私は保護者から連絡帳を受け取る。夜中に咳が出ました。朝は少し機嫌が悪いです。昨日、帰ってから熱を測ったら三十七度二分でした。そういう小さな報告の一つひとつで、その日の保育は少しずつ形を変える。私は保育士になって六年になる。
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【泣ける短編】父の伝言メモと青い皿の下の鍵、離島の民宿で知った約束

島というものは、逃げ場がないかわりに、見ないふりも長くは続かない。朝になれば、船が来るか来ないかで天気がわかる。誰が熱を出したかも、どこの家の洗濯物がまだ干されていないかも、だいたい昼までには知れ渡る。海に囲まれているくせに、秘密はあまり長持ちしない。それでも、家族のこととなると、人は案外うまく見えない壁を立てるものらしい。私は離島の民宿で働いている。
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【感動する泣ける話】写真館スタッフの私が、母の写真の裏の言葉で知った愛情

商店街というものは、昼よりも夕方のほうが本当の顔を見せる気がする。八百屋の濡れた床。魚屋の氷の溶ける音。時計屋のショーケースに残る薄い指紋。写真館のガラスに映る、客のいなくなった通りの色。そういうものが、店じまいの気配といっしょに、少しずつ静かになる。私はその静かさが好きだった。賑やかなものは、どうも信用しきれない。笑顔だってそうだ。